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エピローグ
歓迎レセプション会場から飛び出した美百合はぷりぷりと怒っている。
「もう、龍一ってば! 谷口さんを島に迎えに来させたっきり、どうして二日も音信不通なのよっ」
谷口もその件に関しては山ほど言いたいことがあるが、警護対象の美百合にずっと耳元でキャンキャンと喚かれ続けて、本当に疲れている。
心底疲れているところへ、国賓を招いたパーティ会場に美百合を連れて乗り込んで来いという、龍一からの厳命だ。
もう、意味がわからない。
島から保護された後の美百合は、自宅に帰ることも許されず、龍一には放っておかれて、今日まで怒り心頭に達していた。
だから谷口から龍一の居場所を聞かされた瞬間、ためらうことなく、一緒にパーティ会場に乗り込んで行った。
カエルジャージで、たいした度胸だ。
今回の事件について、龍一の目的も事件の結末も、結局、谷口は何も聞かされぬままだ。
だがとにかくすべては終わったようなので、もうただ、家に帰りたいと思っている。
「ここまでの代行で、俺のサービス残業は終わりだろー」
会場まで運転してきた龍一の愛車のキーを投げ渡そうとして、後ろにいるはずのふたりを振り返る。
すると、怒りをそのまま表現するように、ずんずんと歩く美百合の後ろから、龍一が苦笑しながら付き従ってくる。
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