エピローグ

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そして、 「なあ……」 情けない声をかけているようだが、どうやら美百合には無視されているようだ。 天下の有坂龍一も『形無し』という感じである。 しかし、夫婦げんかは犬も食わないと言うし、と谷口が黙って見ていると、龍一は懲りる様子もなく、 「今回はお前に生きてくれと頼んでから、俺は誰も殺していない」 驚くほど物騒なことを口走る。 「はぁ!?」 美百合は、ガンをつけられた不良のような返事をした。 でも谷口の位置から見る龍一の顔は真剣そのものだ。 そしてその言葉の重大な意味も、谷口にだけはわかる。 あの冷酷無比の有坂龍一が、 目的のためには手段を選ばない血も涙もないロボットと評された男が、  ――人を殺すのを止めた?
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