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プロローグ
正体のわからぬ者の手のひらが美百合の身体を這い回っている。
ソレが何をされているのか十分に理解できるが、どうしたことか美百合の身体は自分の思うように動かない。
身をよじって、その手のひらから逃れたいとするのだが、腕も足も鉛を仕込まれたように重く、動かすことが出来ない。
それから鼻につく甘い匂いは、イチゴだろうか。
家業がイチゴ農園だから身近でよく知っている香りだが、フルーツの爽やかさはない。
消しゴムに仕込まれた人工香料のような、ねっとりと鼻腔の奥にからみつくような臭い。
その臭いが美百合の頭を痺れさせる。
そのとき、男の指が美百合の敏感なところを探り当て、思わず美百合は、
「――ああっ」
声を上げた。
身体がピクンと反応する。
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