楽園

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まだふたりだった時には、龍一は美百合に己のすべてをぶつけるようなセックスをした。 だけど今は、隣のベビーベッドに愛娘の桃華が眠っている。 まだ一歳に満たない乳児で、眠りも浅い。 コトは静かに密やかに行われなければならない。 けれど、 「ああっ……」 美百合が声をあげてしまったのは、久しぶりに受け入れた龍一が熱くて大き過ぎたせいだ。 いつまでたっても、美百合は龍一に慣れるということが出来ない。 すると案の定、 「ふえぇぇっ――」 ベビーベッドの桃華が泣き出してしまった。 父親に似て神経質な子どもだ。 こうなってしまったら、ちゃんと抱き上げてあやしてやらないと、勝手に泣き止むなんてことはない。 美百合は、 「龍一、ごめんね」 眉を寄せながら謝って、龍一の身体の下から抜け出した。 とたん腕の中に吹き込んできた冷たい風に不快な顔をする龍一。 でも美百合はそんなことにはちっとも気づかず、 「桃ちゃん、もーも、ごめんね」 裸のまま桃華を抱き上げて、よしよしと身体をゆすりながらあやしてやる。 その姿は、それはそれは微笑ましい光景なのだが、 でも、龍一の口からは小さく、 「ちっ」 舌打ちがこぼれた。
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