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しかしふと、龍一にまた新たな任務が迫っているのかという考えが美百合の頭に浮かんで、
――ギクリ、とした。
龍一が任務に出向くのは、龍一も美百合も本意ではない。
でも龍一は、常に世界からその能力を求められている。
そんな男だ。
だから美百合は聞いてみる。
緊張がそうさせるのか、目の前に紗がかかったように視界がぼやけた。
「ねえ、もしかして、また桜庭さんから電話あったの?」
何回かまばたきを繰り返す。
美百合にしてみたら親の敵よりもタチが悪い相手の名前。
「また、どこかに行っちゃうの?」
不安で胸が潰れそうな思いがした。
龍一が出かけていってしまうことが怖い。
離れていることが怖い。
龍一に与えられる任務は、いつも彼の生命とひきかえの、危険と隣り合わせの危いものだ。
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