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失礼な人だとは思わなかった。
彼女が無類の本好きだということは知っていたし、何より疎遠になっていたここ数年間を考えると、この距離も当然だと思った。会話はなく、待合室にはページを捲る音だけが響いている。
小学生の頃、近所に住む彼女とは毎日一緒に遊んでいたというのに。理不尽に離れていくその距離に僕が抗うことはなかった。
彼女が今日学校終わりに来てくれたのだって、母の言いつけを守ったに過ぎないのだろう。親たちはどうやら、幼い頃の友達は歳を重ねてもずっと友達であり続けるのだと考えているらしかった。僕はそんなことはないと、中学の制服に身を包む彼女の、こわいくらいに大人びた後ろ姿を見て悟っていたというのに。
「ねぇ、本は好き?」
震える声で尋ねると、彼女はきょとんとした顔になった。
「当たり前じゃない」
僕が苦手な本を読み続けていた理由を、彼女は最後まで知らないのだった。
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