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8月の熱気にあてられて、夏バテ気味の体を引きずりながら、幼なじみの家に向かっていた。
茂木と書かれた表札を見つけてその家の前で足を止めた。
幼かった頃の様に友人の家のインターホンのボタンを押すとすぐに扉が開いた。明るく出迎えてくれた幼なじみの母に挨拶をするとニッコリと微笑んで応えてくれる。
女の子は、なにかと時間が掛かるから家に入ってお茶でも飲んで行きなさい、そう言って僕を家の中に招き入れてくれた。
リビングに案内され、テーブルの上にコップが一つ置かれた。そのコップに麦茶を注いでもらう。
麦茶を少しずつ飲みながらテレビを見ていると階段を慌てて降りてくる足音が聞こえてくる。一瞬、豪雨(ごうう)かと思うほどの足音に驚き、音のする方に目線を向けると、服を気にしながら待たせてしまったことを謝る幼なじみの姿があった。
気の利いたことが言えればよかったのだが、照れくさくて言えなかった僕は、麻里(まり)から視線をそらし、ぶっきらぼうに早く行こうと言ってから、おばさんにお礼を言って、先に家を出てしまった。
茂木家を出てから、自分の態度が悪かったことに気づき後悔の念を抱いた。高校生になると幼なじみを異性として意識してしまう。中学生にあがってからは、部活などが忙しくて段々と話さなくなっていった。高校も別々になったので久々に再会した時、一年足らずで人の見た目は、ここまで変わるのかと、驚いたのを覚えている。
家から元気よく飛び出してきた麻里は、そのまま僕の肩を拳で軽くたたいた。
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