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『友達から聞いた話なんだけど、とりあえず、その子の名前は、Aちゃんね』
口が渇かないようにハーブティーを飲む姿が可愛いと思った半面、自分が情けなく思えた。
僕は、相槌を打って彼女の話しに耳を傾けた。
『Aちゃんが高校から家に帰る途中に起きた出来事だったらしいんだけど、その前の日に雨が降ってて帰り道に水溜まりができてたんだって。Aちゃんは、バッグから鏡を出すのが面倒だったから水溜まりを鏡代わりにしたの。そしたら、Aちゃんの後ろにいたの』
何が映ったのか聞いてほしいと、言いたそうな表情をしていた。
何が?と僕が言うと彼女は、自信満々に答えた。
『黒い影。しかも、その影が動くんだって。キョロキョロしたりAちゃんの顔を覗き込んだりしながら。なんだか、今の塁みたいだね』
いきなり、僕の名前を笑いながら言うので少し戸惑った。
『僕は、覗いたことなんかないし影じゃないよ。影も薄いし』
『意味わかんない』
そう言いながら、笑う麻里の表情は今日一番と言って良いほど素敵だった。
喫茶店から出て、帰るにはまだ早すぎると麻里が言うので、僕達は、ショッピングモールで服を見ることになった。
ショッピングモールには、男物の服が置いてある店もあったので麻里に引っ張られながらその店に入った。
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