感謝を込めて

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 僕は、オシャレに関して無頓着だった。出掛けるときの格好は、よれよれのTシャツに色あせたGパン。靴は、ワゴンセールで買った無名の靴だった。  服の話しになって何も答えないで居たらこんな結果になってしまった。  僕は、自分という人間が情けなくてどうしようもなかった。  麻里に手渡された服を試着室で着替える。長年、使い古したシャツとズボンは脱ぎやすい。頼もしさを感じるシャツとズボンに少しの間、お別れする事を言って着ていた服を脱ぎ捨てた。  着替え終わったので、試着室のカーテンを開け、麻里の前に立った。 『やっぱ似合う。塁(るい)はかっこいいんだからオシャレしないと勿体ないよ』  麻里は、そう言って店にいた従業員のお兄さんに同意を促した。  お兄さんは、笑顔で『そうですよ。勿体ないですよ』と言っていたが、本心はそう思っていないだろう。彼女だけが本気で言っているのだと僕は、思った。  その後も麻里は、僕を連れまわし服を見て回った。女物の服を見ていても僕は、良いんじゃないかなと言うだけでそれ以上何も言えなかった。次に誘われた時には、ちゃんと答えられるように雑誌を買ったりして勉強しようと思ったが、次があるのだろうか、と少し不安になった。
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