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「満足しましたか?」
「いや、まだ」
「じゃあ、どうします?」
親にも会った。
昔いじめられていたアイツにも会って一発だけ殴ってやった。中学の時憧れていた美樹ちゃんには、恥ずかしくて声がかけられなかったけど、今でも美人だったという事は確認できた。
あとは、なんだろう。
「電車来ちゃいますよ」
「じゃあ最後に、一つだけ」
生きている間には奥手過ぎてできなかった事。
「変態だって思わないでほしいんだけど」
「なるほど。そういう事ですね」
全てを悟ったように立ち上がり目の前に立つ。僕より少し低い。
「君も笑うんだね」
無表情だったその顔と笑顔のギャップが心臓の鼓動を速くした。そんな気がした。
彼女が背伸びして。
僕が少し首を傾けて。
風の音と蝉の声だけが響く。
「これで、いけますか?」
「うん。ありがとう」
踏切が鳴る。
もうすぐ電車が来る。
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