陽炎

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「貴方は……」 「やっと話してくれた! 何聞こう。 趣味、部活、それとも眼鏡……」 「心の声、だだ漏れ」 「……うっ」 「ま、別に良いけど。 眼鏡、伊達じゃないから」 「そう……彼氏いるの?」 「彼氏はいない。 でも好きな人はいる」 「それって……」 「藤波唯花(ふじなみゆいか)」 「えっ?」 「……私の名前。 質問の前に名乗ったら?」 「古宮遼一(こみやりょういち)。 で、好きな人は?」 「貴方」 「えっ……何で!?」 「私、この本に出てくる貴方が好き。 貴方は崇徳院の生まれ変わり、古宮遼一。 戻ってきて。私の一番大切な人」 「何度でも会おう。時が許す限り……」 眼前の少年はフッと笑うと、陽炎のように揺らめき、本の中へ吸い込まれる。 彼に再びまみえるために少女は本を閉じる― 瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の われても末にあはむとぞ思ふ
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