遠くから眺めているだけなんて、誰にでも出来る。

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僕は、もがいた。 四方八方に醜い僕の姿が写る。 空気を求めて喘ぐ僕。 あの人魚のように恐怖に晒され。 あの人魚のように酸素を奪われ。 僕はきっと死ぬのだろう。 吸っても吸っても、足りない。 吐いても吐いても、無くならない。 僕は仰向けに、寝転がった。 霞んでいく視界に、人魚が写った。 けれど彼女らが、僕に最後に見せたのは。 美しい舞いなどではけしてなく、あのたゆたう薄布すら微動だにしない。 水を、彼女らを、酸素を求める、僕の姿だった。 ***end
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