新しいさよなら

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暑い暑い夏が今年も来た。 空には大きな入道雲が広がっている。 天気予報によれば今日は今年の最高気温を記録しているらしい。 「あーあ、アイス溶けちまったかな?」 一番近くのコンビニまでかなりの距離があるため きっとアイスはドロドロに溶けているだろう。 何もかも、この暑さと自転車のタイヤがパンクしたのがいけない。 「それにしても、暑いなぁ…。」 乗れなくなった自転車を押して坂を上る。 かごの中のビニール袋がカサリと音をたてる。 吹き出してくる汗をぬぐいながら、緑豊かな田園の中の坂を上りきると、俺は古いバス停を見つけた。 普段立ち寄らない場所だが、日陰になっているバス停の中は涼しそうだった。 暑さのせいで重く感じる体を動かして、そのバス停の中で少しだけ休む事にする。 バス停の外に自転車を停めて日陰の恩恵を受ける為に俺は少し不気味にも感じるバス停の中に足を踏み入れた。 「あぁ、涼しい!」 バス停の中は1日中日陰になっているので、そこだけまるで別世界のようにヒンヤリとしている。 あまりの快適さに間抜けな声を出してしまった俺だったが、先客がいることに気付き思わず赤面した。 イスに座っていたのは少女だった。 ここから歩いて一時間程かかる高校の制服を着ているその少女は、とても愛くるしい顔立ちだ。 片手に本を持ち、細いフレームの眼鏡かけている。 ちょっとドキドキしながら、壁に体を預けてスマホをいじるふりをする。 バス停の中はヒンヤリしているはずなのに、何故か暑く感じた。
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