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しばらく、スマホをいじるふりを続けて少女を観察した。
俺は変態ではない。
もう一度言う。変態ではない。
ただあまりにも少女が美しすぎて目が離せないのだ。
バス停の外では蝉が煩く鳴いている。
それすら遠く感じる程だった。
彼女がいきなり視線を俺に向けたのは、それから5分後の事である。
彼女の目がフレーム越しに俺と合う。
涼やかな彼女の目もと。
いやでも、俺は意識してしまう。
今まで文章を見つめていた漆黒の瞳が俺を見つめているのだ。
突如として、彼女の小さな桃色の唇が開く。
「あの……………。」
思ったより高い声。
容姿にぴったりの可憐な声だ。
「な、なんですか?」
俺が少々どもりぎみに答えると、彼女は驚きの言葉を発した。
「ズボンのファスナー開いてますよ。」
さようなら俺の一目惚れ。
相も変わらずに外では煩く蝉が鳴いている。
暑い暑い夏が今年もやって来た。
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