第1章

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「あっ待って!」 たった今出ていってしまった電車に項垂れながら、ショボショボとベンチに座る。 「また逃したね」 最近配属された駅員さんが人懐っこい笑みで、話しかけてくる。 「また、じゃないです!今回もたまたまです!」 「それ、昨日も言ってなかった?」 「昨日もたまたまなんです!」 それを聞くと実に面白そうに目を細め、少し高い音で笑い声を上げた。 私は苛つきながら、批難の目で睨み付ける。 そんなこと気にもせず、彼は笑い続ける。 「ん、どうしたの?」 気がついたらボーと見つめていたようで、慌てて咳払いをし、鞄からいそいそと読みかけの本を取り出す。 「本を読むので、静かにしててください」 今度こそ睨み付けながら、彼を見る。 彼は笑ながら持ち場に戻った。 さて、明日はどんな言い訳しよう。
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