0人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ待って!」
たった今出ていってしまった電車に項垂れながら、ショボショボとベンチに座る。
「また逃したね」
最近配属された駅員さんが人懐っこい笑みで、話しかけてくる。
「また、じゃないです!今回もたまたまです!」
「それ、昨日も言ってなかった?」
「昨日もたまたまなんです!」
それを聞くと実に面白そうに目を細め、少し高い音で笑い声を上げた。
私は苛つきながら、批難の目で睨み付ける。
そんなこと気にもせず、彼は笑い続ける。
「ん、どうしたの?」
気がついたらボーと見つめていたようで、慌てて咳払いをし、鞄からいそいそと読みかけの本を取り出す。
「本を読むので、静かにしててください」
今度こそ睨み付けながら、彼を見る。
彼は笑ながら持ち場に戻った。
さて、明日はどんな言い訳しよう。
最初のコメントを投稿しよう!