一章 変わりない日常

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「バチン」 その時 僕の背中に。まるで正座をし。足を崩した時のような 痺れが襲った。 すかさず後ろを見ると そいつ。春風雅「はるかぜ みやび」がたっていた。 そう。 こいつに出逢い 接する事で。 僕の 苦しみは和らいだといっても過言ではない。 が 見た目が あまりにも反しているせいか 怖がる人もいる。 それもそうだろう。 赤髪にツーブロックの髪型。 ピアスに 格闘技をしているせいか ガタイもいい。 だが 僕は思う 人は見た目より中身なんだと。 そして こいつはそのいい例なんだ。 でも少し 見た目変えればいいのに。 「お。い。お。い。な。ん。だ。よ。そ。の。あ。わ。れ。ん。だ。目。わ!」 「すまない。手話をしてくれないか?」 と僕はすかさず 手話で返した。 そうすると雅は頭をかきながら おもむろにノートを取り出した。 「手話は苦手なんだよ!お前 おれがせっかく見つけたDVDみてないのかよ。」 とノートにつづり そんな目の前に出さなくてもいいと思うほどの至近距離に まるで 印籠を掲げるが如くにさしだした。 僕はノートを取り上げ 雅の問いに対し 「いや。悪い。見たは見たけど 目で追ってると具合悪くなってしまって。」 雅がくれたDVDと言うのは 発音練習のようなものだった。 口の動作で言葉を読み取る為のようなもの。 不便だらけの世界だが 世界もまた そんな僕を受け入れる為に色々な工夫を施してくれる。 「そっか。じゃー仕方ねーな。 今日 それ見ながら一緒に練習な?」 と書いたノートを僕に投げ出し 肩を叩き 駆け足で校舎に向かった。 そして僕は気づく事になる。 やり取りをしているうちに 遅刻ギリギリだと。 そして思う。 世界は工夫してくれるが。 世界は優しくはないと。 そして 今日も何も変わらない日常がはじまる
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