第1話

15/27
前へ
/27ページ
次へ
奏多は半年経った頃から、健と華乃が家で一緒にいるとき、二人の前にやって来て、健にいちゃもんを付けるようになった。 「そのソファーは、父さんのお気に入りのカッシーナだ。お前が座るなんて100年早い」 この日もリビングにある噴水に座っていた、華乃と健の前に立つと、奏多は健に向かって言った。すぐさま華乃は注意する。 「やめなさい、奏多。そんなおっかない顔して」 しかし健は苦笑いをしながら 「ハハハ。俺、弟くんに相当嫌われてるみたいだな」 「ごめんね。気にしないでね」と華乃が健に対して謝ると、奏多は「家を汚すなよ、健」と冷たく言った。 「奏多!」 「良いよ華乃、別に。仲良くしようぜ」 「誰がおまえなんかと」 奏多はそう言い捨て、華乃と健が唖然と口を開けるなか、玄関ホールのよこにある大理石の扉のエレベーターで、自室のある五階へ上がって行った。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加