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海辺の待合室に、学生服の少年が駆け込んできた。
よほど急いだのか息を切らしている。
年配の女性駅員が、
B「随分早いのね」
次に電車が来るのは一時間後だ。
A「待ち合わせを、」恋人と。
小声で打ち明けた。
すると老齢の女性は、
B「まぁ! 素敵ね」と微笑まし気に笑う。
少年は照れ隠しに前髪を引っ張り、ベンチに腰掛けて、鞄から一冊の文庫本を取り出した。
蝉の声が木造の待合室に木霊し、焼けるような日射しが程よく遮られて、木漏れ日となって差し込んでいた。
B「行ってしまうよ、電車」
駅員のおじさんが、待合室で船を漕いでいる少女に声をかけた。
セーラー服の少女は、はっと目を覚ました。ズレた眼鏡を直して、
A「いいんです」
電車を待ってる訳じゃないから、と答える。
山の手にある駅だからか、次の電車が来るのは一時間後だ。
少女は時計を見て時刻を確認し、鞄から一冊の文庫本を取り出した。
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