第1章

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海辺の待合室に、学生服の少年が駆け込んできた。 よほど急いだのか息を切らしている。 年配の女性駅員が、 B「随分早いのね」 次に電車が来るのは一時間後だ。 A「待ち合わせを、」恋人と。 小声で打ち明けた。 すると老齢の女性は、 B「まぁ! 素敵ね」と微笑まし気に笑う。 少年は照れ隠しに前髪を引っ張り、ベンチに腰掛けて、鞄から一冊の文庫本を取り出した。 蝉の声が木造の待合室に木霊し、焼けるような日射しが程よく遮られて、木漏れ日となって差し込んでいた。 B「行ってしまうよ、電車」 駅員のおじさんが、待合室で船を漕いでいる少女に声をかけた。 セーラー服の少女は、はっと目を覚ました。ズレた眼鏡を直して、 A「いいんです」 電車を待ってる訳じゃないから、と答える。 山の手にある駅だからか、次の電車が来るのは一時間後だ。 少女は時計を見て時刻を確認し、鞄から一冊の文庫本を取り出した。
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