第1章

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「本心ちゃうよ、タダにしてくれる言うし、親身にしてくれるんやから、リップサービスくらいしとかんとね」ケロっとした顔で薫ちゃんは言った。「マサも、阿部ちゃんに頼ってばかりおらんで、キラキラするもん、捜しいや」 背中をバンっと叩いて薫ちゃんはオレに顔を背けた…少しその頬が赤くなっていたような気がしたが、最近ほどいている綺麗なストレートヘアで隠れてしまった…まさか、ね? 次の日から、阿部の持って来た色んなキラキラしたもの、鏡にかんざし、ガラスの根付けや、ビー玉、水槽に入った尾っぽの長い金魚、銀のくしや磨いた百円玉などなど、を握りしめて寝たけれども、オレの夢の中のねむの精によってことごとく退けられた…オレも必死になって、透明なゼリーや白い小さな庭石や、アロエの果肉部分なんかを差し出したけれど、それもブッブーだった。万策尽きて薫ちゃんが透明な点滴袋を差し出した時は、さすがにオレが首を横に振った。  いや、それはないでしょう。  毎晩薫ちゃんの夜勤室かファミレスに三人で集まり、何ら色気のある話のないままに夏が過ぎ、夢の中のねむの花は数を減らし始めた。  ああ、何の解決策が見いだせないままに、今年も不能の季節が終わる…。  オレはため息をつきながら、二回ノックしてから夜勤室のドアを開いた。 「お疲れさまです」 当然の顔で、阿部が迎えた。今日は、黄色いTシャツに太ももパツンパツンの白いスキニ―パンツ…何て言うか、何ら一貫性のないファッションを毎度毎度見せつけられると、一日の疲れが急に来て脱力する。 「これやるよ」  いきなり目の前に押しつけられた紙袋に阿部は驚いた。ナンパ仲間にセレクトしてもらった安いけどいかしている白シャツとコットンパンツが入っている。
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