第1章

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 トラックの荷台にシャベルを積み込んで、完了。 「アッチィ」  ゴールデンウイークなのに、頭上の太陽は、もう真夏だ。 「マサ、早よおせえ」  親父のだみ声に急かされて、助手席に滑り込んだ。頭に巻いたタオルは、もう汗で蒸れてきている。 「親父、今日は三軒やな?」  ハンドルを持つ親父に尋ねた。慣れたハンドルさばきで狭い路地を行く親父が答える。 「新勝寺と勝山旅館…そんから、守屋さんとこだ」モノレールの駅前の小さな池田商店街のアーケードを通り過ぎて、花開いたテッセンを木塀に絡ませた古い木造住宅(オレん家と一緒の平屋だ)の角を曲がった。 「大丈夫か?」  大通りに出て、信号で止まると、親父がぶっきらぼうに聞いてきた。 「おう、ノープロブレムや」  頭痛は、まだしない。  五月とは思えない日射しに目を細めながらオレはなるべく明るく聞こえるように答えた。  大丈夫、今日は、きっと大丈夫。  「マサッ!!」  体がフワって浮いた瞬間、親父の焦った声が響いた。響いたと思った時には後頭部に鋭い痛みを覚えて、目前にぱっと火花が散った。  うわぉ、本当に、強打すると星が出るんだ、マンガみてーって冷静に考えたのが、守屋邸の庭での最後の記憶だった。  次に目が覚めた時は、真っ白い壁に囲まれた病院のベットの上で、オレの憧れの従姉どのが覆いかぶさっていた。いつもは結んでいる背中までの髪が珍しくほどかれていて、目の隅でサラサラと音がしそうだった。  うわっ、いきなりキスですか?ラッキー!  動物的に、点滴をつけられた両腕で抱き締めたら、腹に一発お見舞いされた…うん、拳骨を、食らったわけ。 「…あほやあほやと思っとったけど、目が覚めたとたんにこれって、どんだけ動物の雄なんやっ!あんたはぁ!」  確信をもって言える。  あの時、周りの看護師さん達が止めてくれなかったら、オレは目が覚めたとたんに、もう一度眠らされていた…ヘタしたら、永遠に。
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