第1章

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「いくら医者だからって、そういう相談を、妙齢の女性にしてくるその神経が、信じられん…カノジョとできないからって…えっ?何?カノジョじゃない、ただのセフレ?このっ!下半身男ぉっ!だからって、私に相談してこないで…よ…マサ?」  夜勤室の奥のベッドをオレの視界から遮っていた薫ちゃんが、明らかなオレの異変に気づいて心配そうにオレの顔を覗き込んだ。  ほら、ふわって薫ちゃんのいい匂いがして、こんなに顔が近くて、奥にベッドがあったりしたら、即スイッチが入るオレの真ん中が、すっかりしょぼくれている。 「…確かに、おかしい、マサの野獣の空気が壊滅しとる…ちょっとおいでっ!」  それから緊急でCT撮って、脳波も測定して、さらに血液検査までしてくれたけれど、オレは健康そのものだった。  そして、オレの不調はお盆の頃まで続いた。  いや、正確には、ねむの花が枯れるまで続いた…あれから何度も、自宅で夜寝る度に見た、夢の中の守屋邸のねむの花が散った時、オレの真ん中は復活した。  秋と冬は、ひと肌が恋しくなる時期だ。  そして、オレはその季節に、女性の素晴らしさを満喫した。  薫ちゃんは一種のPТSDだろうって言った。木から落ちた庭で、オレの心の中の怯えが(拡大解釈すると死への恐怖って言ってたケド、オレあほだからわかんねー)甦って、精神的ショックによって不能に陥ったんだろう、って説明してくれた。  夜勤室は拒否されて、ロビーで話した…マサの空気が獣だから、狭い所で二人きりになんて危なくてなれないって言われたぁ~。  五月に遠のいたセフレの後、ミナミでナンパした子に、合コンで知り合った子、などなど、狩りの秋・冬だった。夏にできなかった分、欲望が溜まっていて、自分でも呆れた…守屋邸に行った夜は、またおかしくなるのが怖くて、よけい飢えたように女を追いかけた。  はい、すみません、下半身の男でした。  バチが当たったのかな…だって、次の五月に、また同じ目にあったから。
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