「遅刻だよ」

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ここは小さい頃からの、二人だけの秘密基地。 ここに来ると、必ず彼女はあの本を読む。いつも持っているあの本を。 いつも過ごしていた静寂の時間。けど今日だけはそうしなかった。 B「ねえ」 A「ん?」 B「それ、何の本だっけ」 彼女はきょとんとした顔で返す。 A「覚えてないの?」 B「うん」 A「これはね、王子様を待つお姫様のお話」 何処か覚えのある内容に首を傾げる。 A「小さい頃からずっと、ず~っと大事にしてるの」 その本を大事に、とても大事にぎゅっと抱える彼女の姿。そこに重なるセピア色の記憶。 A「だって、これは」 思い出した。その本は幼い僕が、今の僕と変わらない想いでプレゼントした――。 A「一番の、宝物だから」 ――僕から君への、最初の贈り物だ。 B「…………待たせたね」 僕の言葉に、君は微笑む。 A「遅刻だよ。……大遅刻なんだから」
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