第1章

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アメリカ、イリノイ州 シカゴ 空港に到着した1人の日本人男性、彼の名はジョー、ボサボサのざんばら頭に顎髭を蓄えている30歳の青年。 未だ独身、ジミヘンドリクスから入った音楽は上へ下へ色々なジャンルを浅く聞き渡り、アメリカ文化に憧れを抱いている言わばアメリカかぶれ。 夢にまで見たアメリカへ旅行に来たのだ。 今回の旅の目的はシカゴからルート66と言われていた国道を通りカリフォルニアまで向かう旅である。 このルート66もアメリカかぶれの彼にはただの優越感に浸るだけの目的だが、彼はこの旅に昔から馴染みのある友人を巻き込んでいた。 その友人達と現地で再会する事になっていたが、会うのは久しぶりだ。 ツイッターやフェイスブックといったSNSの普及で再会できた馴染みの友人達だ。 それぞれと合流するまでに彼には車を調達する事になっていた。 ショーウィンドウに映るボサボサなパーマ頭をチョンチョンとセットしなおし、ディアドロップのサングラスをその薄い顔にセットにレンタカー屋に向かうジョー。 『マスタングだ!絶対!』 凝り性のジョーは少し間の抜けたところがあるのがたまにキズ。ないのだ。 いや、マスタングはあるのだが、彼にはそれがマスタングじゃない。 初代を意識している7台目でさえ彼にはマスタングじゃない。彼のイメージはもちろん64年からの初代。 クラシック。ただそれだけの雰囲気を味わいたいかぶれた彼には必要不可欠な車だが、レンタカー屋でレンタルされているわけがないのだ。頭をかかえたジョーだったが、そこに一本の電話が入った。 『ジョー。シカゴに着いたの?場所を教えて~。今から迎えに行く』 『ゆうや!車あるのか!?』 このゆうやと言うのがこれまたとても凝り性で、高円寺で古着屋を経営している。20歳のとき以来10年ぶりの姿だが、ヴィンテージと呼ばれる召し物を着込んで現れるのはジョーには目に見えていたが、まさか、いや、さすがと言うべきか。まさしくマスタング! それに乗ってジョーの前に現れた。
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