第1章

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ブォオオン、とドライヤーの熱気が春佳を包んだ。 洗面所の明かりは点けているが、すぐそばにある浴室も明かりを点けっぱなしである。春佳は暗い浴室が苦手だからだ。 しかも真夜中の、丑三つ時を過ぎた時間。水辺には霊が集まるといわれている。 本当は、朝から入ろうと思っていたのだがこうも汗をかくと気持ち悪くて寝付けるきがしなかった。 (くすぐったい……) 左肘に何か柔らかいものが当たる。 腕を上げ、左横腹を見れば髪の毛が一本そこに着いていた。 いつものことだが、長い髪は乾かしている時も抜け落ちる。体中に張り付く髪の毛にうんざりする。 横腹の髪の毛を取り、ゴミ箱に捨てた春佳は再び髪を乾かし始める。 (暑い……) 鏡を見ながらなかなか乾かない髪を、片手でわしゃわしゃしながらドライヤーを当て続けた。 しかし、その時――点けたままの浴室の電気が点滅を始めたのである。 「えっ!?」 鏡越しにそれが見えた春佳は振り替えり、浴室の電気を見つめた。 「もう切れちゃう?」 流石に勿体ないと思った春佳は、浴室のドアを閉め乾燥させるスイッチは点けたまま、電気だけを消した。 (ヤバ……やっぱ怖いかも) 磨りガラス越しとはいえ、真っ暗になった浴室が春佳に恐怖心を与えた。 再びドライヤーを手に取り、スイッチを入れる。鏡越しに見える浴室の扉がどうしても気になった。
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