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早く乾かそう、そう思った春佳は素早く乾かすためとにかく髪の毛の間に熱風を送り込んだ。
自然と髪を触る手の動きが速くなる。
チラチラと鏡越しに映る浴室の扉に目がいった。
そして、漸く髪を乾かし終えた春佳。まだ毛先は濡れているが、構うことはない。軽く櫛で解いて浴室を出ようとしたとき、またも左肘に髪の毛が当たるのを感じた。
「もうっ……」
手で掴み、それを見ると
「……!?」
そこには一本の髪の毛ではなく、無数の髪の束があった。
「やっ……!」
思わず手を離すと、今度はパチンと洗面所の明かりが消えた。
えっ、と声を上げる暇もなく再び電気が点く。
何だったんだ、と思い床に目を落とした。
すると、さっき落としたはずの髪の毛がなかったのである。
「え?」
確かにこの手で掴んだ。先程の感触思い出し、身震いする春佳。さっさと部屋に戻るべく、洗面所の電気を消そうと洗面台に手を伸ばした。
――見なければ良かった。
後悔しても遅い。目を見開き、動きが止まる春佳は一点を見つめていた。
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