私には分からない痛み

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読書をしていると、本に影が落ちた。 「なんだ、また遅延か?」 影の正体は父だった。 父は最近様子が可笑しく、落ち着きがなく時々辛そうな表情を浮かべる事があった。 それに、私より早く家を出る父がこんな時間にまだ駅にいるのも変だ。 「病院、行くんでしょ?」 父が苦しんでいるのは分かっていた。 だけど私にそれを隠していたのは、娘に心配をかけたくないという父なりの気遣いかも知れない。 「…バレてたか」 父は、少し困ったように笑った。 「そんなに、悪いの?」 父の病名も分かっているが、それがどれほど危険な状態かは知らない。 「大した事じゃないさ…」 そう言って私の鞄を抱えて隣に腰掛けようとする父に、私は思わず手を伸ばしていた。 家ではあんなに辛そうにしていたのに。 「痔なのに座っても大丈夫なの!?」
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