もう誰もいない世界で本を読もう

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 その建築物は保存状態がよく、自然の侵食を免れていた。  内部の装飾からは、この土地の交通機関であったことが推測できる。  慎重に奥へ進むと、先行していた相棒がすっかりと貴重な古代遺跡に馴染み、寛いでいた。  相棒は妙なジンクスを信奉しており、その土地の衣装を身にまとい調査を行う。  あるいは、ここで文明が栄えていたころ、このような光景が日常だったのかもしれない。 「……なにをしている」 「読書という行為。これは印刷という技術を用いて、テキストを保存したもの――本と呼ばれていた。興味深い」  相棒は俺の怒気にも気付かず、上目遣いで答えた。
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