第1章

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彼女が待っている。僕を待っているのだ。常に本を携帯して歩く読書家の彼女はちょっとした待ち時間でも本を開いている。学校もクラスも同じ僕とのデートでさえ持ってくるくらいだ。でも僕だけは知っている。読書家なだけに凄い速さで本を読める彼女が、僕を待つ時だけはページを捲らずただただ”本を読んでいます”というポーズを取ることを。 B「待たせた?」 僕は声を上げるとややあって顔を上げた彼女の頬は赤みを帯びていて、今気づいたとばかりに本を片づける。僕はそんな彼女を少し離れた場所から見るのが好きで、待ち合わせ場所に先に着いたとしても身を隠してついつい声をかけるのを渋ってしまう。 A「貴方の時間はいつも五分遅れなのね」 B「ごめんごめん」 これは、 ”いつも本を読む”彼女と、 ”いつも遅刻する”僕の話。
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