第1章

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5.  部屋は酷い有様だった。自分の部屋のカビは全部ここから来ていたのだと納得した。自他共に認める潔癖症には信じられない光景ばかりで、かなり異臭もしていた。台所に置かれた食品はカビというカビの宝庫、何故かシンクに水が溜められており、それは得たいの知れない色に濁っていた。そこから目線を奥へと動かし、居間に倒れた女の死体と共に椅子に縛られた男を見た瞬間に気絶した。  暫く後に、その時監禁されていた男の見舞いにいった。精神的な疾患が見つかり入院生活だと大家から聞いて発見者でもあり気になったのだ。しかし彼は重症だった。有り得ない記憶を主張するし、何よりも腐った物しか食べ物に見えなくなってしまったらしいのだ。それも、濁った水やカビの生えた物など。それだけで自分は耐えられなかったのだが、それよりも凄いのは調査の結果、本当に男はあの椅子に縛られた状態で発見されるまで飲み食いをしていたという事実が判明したことだ。男は自分の彼女が全ての世話をして、台所から居間まで食べ物を運んでいたと主張するが……
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