第1章

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4. 半年もの間、連絡のつかなかった親友が見つかった。 どうやら彼女に監禁されてそのまま無理心中、しかし何らかの理由で生き残った親友は彼女の死体の前で発狂したまま数週間を過ごしていたらしい。 発狂した、というのは病院からの説明だ。 親友は彼女のことを死んでいないと思っているし、最後の最後まで自分の世話をし、病院へ行く途中もアパートを出るまでは付いてきたと言っているらしい。 俺は今、狂ってしまった親友の見舞いに向かっている。 「よお、」 病院のベッドの上から軽く手を上げて笑いかける親友。 その姿は記憶のものと変わらず、ほっと息を吐く。同時に、狂ってしまったことでもう言葉も交わせないくらいに人格崩壊しているのではと身構えていた自分に気づいた。 「なんだ、元気そうじゃん」 俺も軽く手を上げて答える。 そして見舞いの花束を親友に渡した。 どうやらあまり見舞客はいないらしく、親友のベッドの脇にある花瓶の花は萎れ、水は濁って薄い緑色になっていた。 親友は花瓶を持ち上げる。俺はきっと花瓶の花を代えるのだろうと買って来た花の包装を解こうと近づいた。 「何か飲む?」 花瓶を持ったまま聞く親友に、俺は何故か不安なものを感じた。
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