60cm

前略

突然こんな手紙が届いて、君は驚いているかもしれない。

行雄と連絡をとるのは、正月以来だね。

もうあれから七か月。

暑い日が続いているけど、奥さんと有紀ちゃんは元気にしているかな。

まあ、料理上手の奥さんだから、君たち一家は夏バテとは無縁かもしれないね。

そう、彼女の作るスパイスの効いたスープカレーは絶品だったな！

いきなりの手紙の理由は、行雄にお願いがあるからなんだ。

難しい頼みじゃない。

水族館に魚を寄贈する手伝いをしてほしい、それだけだ。

その魚は僕の部屋にいる。

大きい水槽が手に入らなかったんで、風呂場のバスタブを水槽代わりにしていてね。

そこで飼っている四匹のフエダイを、中央区のマリンパーク日本海に届けてほしい。

簡単だろ？

僕のアパートは覚えているよね。

そうだよ、鍋パーティーをやった、あの部屋。

二年前から、変わっていない。