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腰の重い君のことだから、自分で水族館に届ければいいじゃないかと思っているだろう。
でも、それができないから頼んでいるんだ。
そしてこんなことを頼めるのは、君しかいない。
君は、学生時代から続く唯一の親友。
僕が届けられない理由は、これから説明するよ。
だから、この手紙は、必ず最後まで読んでほしい。
きっと、君なら僕の心情を理解してくれるはずだから。
彼女と出会ったのは、六月の上旬のことだ。
今年、ウチの小学校の二年生は、遠足の行先がマリンパーク日本海だった。
子供たちに課せられた課題は、水族館を巡って好きな動物を写生することと、感想文を書くこと。
だから、図画工作教師の僕も引率することになったわけ。
引率といっても、たいしたことをするわけじゃない。
絵を描いている子供たちを見て回って「よく描けているね」「特徴をとらえているね」って声をかけるだけ。
たまにはなかなか課題の進まない子供たちに、「もうそろそろ仕上げないと宿題になっちゃうよ」と急かしたりもする。
そんなふうに館内を回っていた僕は、『太平洋のいきものたち』と題された巨大水槽の前を通りかかった。
そこで、彼女を見たんだ。
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