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翌日、遠足の課題だった子供たちの絵画を整理しながら、僕は気もそぞろだった。
昨日見た彼女は、何だったのか?
勤務時間の終わりを待って、再びマリンパーク日本海へ向かったのさ。
どうしても、もう一度確認したくてね。
入館締め切り時間ギリギリに受付をすませて、一目散に『太平洋のいきものたち』コーナーへ足を運んだ。
すると、やっぱり彼女はいた。
シュノーケルにゴーグル、ウエットスーツをびっちり着こんで空気タンクまで背負っていた。
だから最初は、てっきり従業員が魚にエサをあげているのだと思ったよ。
でも、しばらく見ているとシュノーケルやゴーグルが、炭酸みたいな細かい泡に変わって立ち昇り、霧消した。
そして、口にくわえていたレギュレーターも背中に背負っていたタンクも、泡と消えた。
残ったのはウエットスーツに身を包み、金髪をなびかせて泳ぐ美女。
ジンベイザメの尾びれに捕まって、引っ張られるように水をかきわけていた。
僕はこの美しい人を記録にとどめたいと思った。
でも、彼女は、スマホのムービーでも、デジタルカメラでも映らない、向こう側の人。
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