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親指を立ててこぶしを握ってね、「ナイス」って感じで合図してくれた。
本当に、うれしかった!
さらに彼女は腰にぶら下げていた大きな塊を掲げてね。
今度は、僕が目を凝らす番だ。
なんだろう、あれ?
よく見ればその塊は、水中撮影用のハウジングとストロボが付いた一眼レフカメラだった。
彼女は、水中カメラマンだったんだよ。
僕へカメラを向けて、シャッターを切ったんだ。
残念ながらその写真を見ることは、絶対に不可能なんだけど、それでもすごく胸が躍った。
彼女のカメラの中に、僕が写ったってだけで、飛び上がらんばかりの最高の気分だったさ!
それからも、毎日のように水族館に通った。
学校で大きな行事がある日や、職員会議のある日は渋々出勤したけど、あとは有給休暇を使いまくった。
母の病状は予断を許さない状況だってね。
さすがに教頭も「親孝行な息子を持って、お母さんも鼻が高かろう」なんて厭味ったらしくいってくる。
でも、全然気にならなかった。彼女の美しさの前では、すべてが些事でしかない。
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