0人が本棚に入れています
本棚に追加
B「ここにいたんだね。あれ、その本…」
A「貸してもらった本ではないです」
B「心が読めるんだね……
ってことは、僕が貸したのは読み終わったの?」
A「はい。とてもおもしろかったです」
B「それはよかった。返してもらうのは急がないから」
A「じゃあ、ずっと借りていてもいいですか?」
B「えっ…いやあそれは…」
徐に、彼女は膝下に下ろしていた視線を上げた。
A「好きなんです」
彼女は僕の目を真っ直ぐ見て言った。
A「…あの本が」
そう言うと視線をまた戻してしまった。
B「…そう…なんだ。
えっと、僕も気に入ってる、あの本」
A「そうですか…それはよかったです。とても」
気のせいか、彼女は笑ってみえた。
A「返す努力はします」
B「努力が必要なのか…」
すると彼女は本を閉じ、立ち上がって言った。
A「その時まで、待っていてくださいね」
今度は確かに、笑っていた。
最初のコメントを投稿しよう!