第1章

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B「ここにいたんだね。あれ、その本…」 A「貸してもらった本ではないです」 B「心が読めるんだね…… ってことは、僕が貸したのは読み終わったの?」 A「はい。とてもおもしろかったです」 B「それはよかった。返してもらうのは急がないから」 A「じゃあ、ずっと借りていてもいいですか?」 B「えっ…いやあそれは…」 徐に、彼女は膝下に下ろしていた視線を上げた。 A「好きなんです」 彼女は僕の目を真っ直ぐ見て言った。 A「…あの本が」 そう言うと視線をまた戻してしまった。 B「…そう…なんだ。 えっと、僕も気に入ってる、あの本」 A「そうですか…それはよかったです。とても」 気のせいか、彼女は笑ってみえた。 A「返す努力はします」 B「努力が必要なのか…」 すると彼女は本を閉じ、立ち上がって言った。 A「その時まで、待っていてくださいね」 今度は確かに、笑っていた。
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