第1章

2/2
前へ
/2ページ
次へ
ねぇ、聞いてくれる? 私の子供時代はね、それはそれは悲惨なものだったの。 ど田舎の貧乏くさい町のなかでも、うちが一番貧しかった。 父親は私が生まれてすぐに蒸発、母親はろくに働きもせず下らない男と付き合っては振られてた。 母親は男に振られる度に私を殴るの。 貧乏が似合う馬鹿な女だった。 私の人生一番の不幸はあの女が母親だったこと。 人生一番の幸運はあの女が事故で死んだこと。 あの女は酔っ払って川で溺れて死んだ。 その後はね、少しツキが回ってきたみたい。 大した男じゃないけど人並みに結婚も出来て、可愛い子供にも恵まれた。 でもね、この前家族でキャンプに行った時にね。 ふと川の水面を覗いたらね、あの女がいたの。 意地の悪そうなつり上がった目元、 疲れてこけた頬、 艶のない長い髪、、、 ぞっとしたわ。 私は人並みの幸せを掴んだ筈なのに、どうしてあんな女に似るのかしら? 二度と顔も見たくなかったのに。 せっかく死んでくれたのに。 せっかく殺したのに!!!
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加