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レジェンドウォ―
世界は伝説で満ちている。
日本では青龍、玄武、白虎、朱雀を筆頭に、天狗や鬼。
世界に目を向ければ、北欧神オーディン、悪魔神バロム。そして歴史上最強と言われている神、ゼウス。
数えきれないほどの伝説が、遠い昔から今まで継がれてきた。
だが、これらの伝説を信じるものは、今や少数になってしまった。
当然といえば当然なのだろう。
なにせ、彼らの姿形を目にしたものは一人もおらず、存在した痕跡さえないのだから。
それに彼らの能力ときたら、死者との会話や大地を変動させる力など、物理限界を簡単に超えている。
これでは信じられないのも無理はない。
だが、こんな考えはどうだろう。
彼らは確かに存在している。
ただし、我々のいるこの世界ではなく、他の世界、いわゆる別次元に。
そして、彼らの伝説が今私たちの世界に伝えられているのは、何らかの原因で、あちらからこちらの世界に移動した人間がいたからだとすれば・・・
「さて、これで掃除は終わりっと」
赤みがかった髪の少年は、使っていたほうきを納屋に戻し、木陰で一服していた。
「全く、いつまでこんなことしていればいいのかねぇ。毎日毎日寺の掃除に鳥の世話、じじいたちの飯作りに風呂の掃除。はぁ。早く一人で生活したいもんだぜ。」
風が穏やかに吹く小高い山の上で、少年は世界を見回した。
すると寺の中から地鳴りのような声が聞こえてきた。
「こりゃ~赤城~。さぼっとらんではよ掃除せんかぁ~」
一瞬舌打ちをして返した。
「もう終わったよ~。・・・全くうるせいじじいだぜ。」
後の言葉は、老人に聞こえないような小声だった。
「何か言ったか~」
再び地鳴り。
「いや何も~」
一瞬ヒヤッとして、寺の中へ入っていった。
「やれやれだぜ。さぁて、次は屋根裏の鳥さんにエサでもあげますかね。」
腕をグーッとのばした後、置いてあったエサ袋を手にとり、階段をゆっくり上っていった。
大分昔に建てられた家なのだろう、階段にはかなり年期が入っている。
「うん?」
目の前をうっすらとした赤い光が横切った。
「なんだこれ。」
光の出どころを目で追っていくと、1つの部屋についた。
「あれは・・・そういえばあの部屋、じじいが絶対入るなっていってた部屋だな。幸い今向こうにいるし、ちょっと覗いてみるか。」
赤城はゆっくりとその部屋に近づいた。
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