ただのメッセージ

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 探偵ーーとは言え、漫画やドラマのような容疑者全員を集めての推理や探偵秘密道具を使って変装など、そこまでアクション的なことをするのは極稀である。  大体、いちいち山荘に閉じ込められて殺人事件が起こっていては、その内日本中のホテルや雪山の山荘で殺人事件が起こりかねない。  そうではない。  探偵の主な仕事は地道な調査だ。  地味で、地道な調査と、極稀な警察から依頼だ。  ミステリーマニアが喜ぶような、そんな展開はそうそう有り得ない。と言うか、あってはならない。  「だからさぁ……君はもう帰りなよ」  普段の敬語を使う気力も無く、ぐったりとした様子で『自称探偵』ーー籠島回路が言った。  本当にぐったりとしているーーまるで骨を抜かれたようにグニャグニャになって、デスクに倒れている。  こんな状態になるまで疲れたのは一体いつ振りだろうか、と考えるのも面倒臭い。普段はこうなる前に調査を終えているのだが、今回は仕事でも趣味でもない。  「お願いします、私を助手にしてください!」  そんな申し出を根気強く、彼女はもう30回以上は繰り返している。  緑ヶ丘椚。
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