ただのメッセージ

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 しかも、信用されているという事実を喜んでいる自分もいて、とてつもなく不快だった。  緑ヶ丘椚がキラキラとした両目でこちらを見つめている。不意に某CMのチワワが脳裏を掠める。  このまま無下に帰すのは心苦しいーーかと言って、受け入れてしまうのも、色んな意味で不味い気がする。  何も悪いことはしていないはずなのに、もう八方塞がりだ。小説で言うところのクライマックス的な気分を、どうしてこうも早く味わうことになるのか。  「……あぁ、もう、分かった、分かりました。好きにすれば良いよ。ただし、フォローも何もしないから、そのつもりでね」  中学生に対して、それ程強く言えないのが、良くなかったのか、緑ヶ丘椚はにんまりと笑顔を作って強く頷いた。  (……もしかして、なつかれたのか?)  とは言え、それを訊くことは、同じクラスの女子に少し優しくされた『私のことが好きなんですか?』と訊くことと同義なので、敢えて口にはしない。  何だかドンドン自分が甘くなっていくようにも思えるが、しかし、次の仕事に同行すれば、すぐに逃げ出すだろう、と言う算段もあった。  ゆとりの脆さが問題視されている現代だ。
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