ただのメッセージ

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 「? 探偵ですが……ですよね?」  言われている意味が分からなかったらしく、訊き返す緑ヶ丘。  (良かった、ちゃんと理解はしている。頭は良い子なんだな……)  嵐が来る前の海のような心中を、何とか深呼吸で抑えながら、柔和な笑顔のままで、今度はこう訊く。  「探偵ってさ、呼び込みは……するかな?」  「え? しないんですか?」  意外そうな顔で驚かれた。  いや、そんな顔で驚かれてもーー  「うん……内はさ、『自称探偵』で通っててーーそう言うのは、あまりイメージに合わないって言うか。でも、ほらーー実際に客を呼び込む探偵なんていないでしょ?」  「でも、たまに家の壁とかに探偵事務所の広告が貼ってあったりしますよ……」  「え? そうなの……?」  知らなかった。と言うことは、むしろ、籠島の方が少数派なのかもしれない。  探偵はあまり顔を世間に知られてはいけない、と言うイメージが先行し過ぎている。  確かに、ある程度の宣伝はしておかなければ、金銭的な理由でこの事務所を畳まなくてはならない未来もあるかもしれない。  ……いや、どれだけネガティブな未来予想図だ。
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