第1章

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 ラクダの乗り心地は案外良かった。青年は俺を後ろに乗せ、水場を目指していた。  やがて「ほら、あそこ」と彼が指差した。  それは想像以上に大きな湖だった。水場というから水溜り程度のものを想像していた。瑞々しい葉を茂らせた木々があり、畔には小鳥がたむろして水を飲んでいる。荒野に浮かぶ楽園。まさしくオアシスだ。  こんなところで妻はのうのうとしてやがるのか。見捨てたつもりだろうが、元気な俺の姿を見て、あの女がどんな反応をするのか楽しみだ。  ラクダを下りた俺は真っ先に水辺に駆け寄った。青年に水を分けてもらったものの、俺の体はまだまだ水を欲しているのだ。
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