第1章

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 両手で水をすくい口に運ぶ。それももどかしくなり、頭ごと水に突っ込んだ。  湖底に何かが見えた。もやもやと糸状のものが蟠っている。  水草だろうか……と思いながらそれに手を伸ばす。その奥に白いものがあった。そこに並んだ二つの目が虚空を見つめている……。  事切れた妻の顔に俺は慌てて体を起こそうとした。  それよりも早く妻の両手が俺の頭を鷲掴みにした。  虚空を見つめていた二つの目が俺を睨む。  ごぼごぼと泡にまみれたような声が耳に届いた。 「助けてくれるって言ったじゃない……」  あんなことを言わなければよかった……と後悔するが、すでにそれは遅すぎた。
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