第1章

8/11
前へ
/11ページ
次へ
 やってきたのはラクダに乗った一人の青年だった。褐色の肌にターバンを巻いている姿を見る限り、現地の人間のようだ。  彼は倒れた俺を抱き起こし、何かを俺の顔の前に差し出した。水筒だ。俺はそれを奪い取るように手にすると、浴びるようにその中身を飲み干した。  青年はその場でテントを張ってくれた。とは言っても屋根だけのタープのようなものだ。それでもその下に入ると風が通り、岩陰にいるよりもかなり涼しく感じる。そこへ横たわった俺に、彼は保存食のようなものを出してくれた。何かを干したものには違いないが、それが何かは分からない。普段なら口にしないだろうが、俺は迷わずそれを食べた。  空腹が満たされるとさらに水が欲しくなった。 「すまないが、もう少し水をもらえないか」  俺の願いに青年は首を静かに振った。 「残念だが、今君が飲んだ水が最後だ」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加