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文学少女は害虫の隠れ家という古い無人駅舎に存在した。焼畑で舞う粉塵のビロード、サナダムシが彼女の尻から飛び出ていた。(飲料のコマーシャルには舌をだす咎人)。夏の日差しが材木をぼろぼろに叩いていた。
ベルトの要らないジーンズをはいた少年が駅舎の外で鼻歌を唄っている。郵便局の前に飛び出て止まる黒いワゴン。かわいい少年が危険な運転手と目を合わせると金網柵の薄れて汚れた白に興奮を催す。錆を食ったトタンの地図を剥がしてやった。きぃきぃしなるような甲高い嬌声――電車はまだ来ないようだ。
ちろちろしたサナダムシは新しい遊び相手を欲しているようだ。
「さっき行ったばかりなのよ」
我慢ならないスケ。秋の咎人。裾のかかる膝頭は照らされ、本は居場所を失い陰でへなっとしている。
「つれないね」。夏の罪滅ぼし。
手の甲で髪をかくような娼婦の真似は言葉とともにあきれた感情を示す。本を再びちろちろと貪りはじめた。
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