第1章

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 ガチャン!!  自転車に罪は無いが真央は他に鬱憤を晴らすところが思い当たらず、スタンドを強く蹴り上げた。  上村から付き合って欲しいと告白された翌日、真央は部活が始まる前に駅前のデパートに寄った。鍵を届けてくれたお礼に何かプレゼントをしようと思いついたからだ。  メンズフロアに一人で行く事が初めてでどこを見ればよいか分からずきょろきょろしていると、母親と同じ年恰好のオバサン店員が近づいてきて真央の話を聞いてくれた。  毎日部活三昧でアルバイトなんかできるわけも無く、プレゼントにかけられる予算は僅かだ。  オバサン店員は恥ずかしくて俯いた真央の背中に優しく手を添えて、ハンカチやアクセサリー等小物が並んでいるコーナーに案内する。  コロンのミニボトルの形が可愛くてつい手に取ったが値札を見てびっくりしてしまいもとの場所にそうっと返した。  上村の好みも何も知らないのだから真央は大いに悩んでいたが、次第に部活が始まる時間が近づいてきた事に慌て、結局無難にタオルを選んだ。  買い物を済ませ練習場所の潟に向かう間、上村に会ったら何て言って渡そうかと脳内でシュミレーションしてみた。  受け取ってくれるだろうか、いきなり物を贈るような自分はどう思われるだろうか。  デパートのオバサン店員は、女の子しかも年下の子から心がこもった贈り物をされて喜ばない男はいないと励ましてくれたが・・・。  部活が始まり時間が過ぎていくうちに段々不安になってきた。  練習が終わると、逸る気持ちを抑えながら上村の大学の艇庫がある方へ走って行った。  着くとその建物のシャッターは下りていて、辺りも人気が無かった。 「今日はここで練習じゃなかったのかな」  上村が毎日この潟に練習に来ない事は昨日聞いていたが、まさか今日がそうとは思ってもみなかった。  上村との連絡手段が無いので、その日は真央は早々に諦めてそのまま家に帰った。  次の日、プレゼントのラッピングが汚れないように潰さないようにと、真央はナイロン袋とタオルで二重にくるんで家を出た。  結果、会う事は叶わなかった。前の日と同じく大学の艇庫のシャッターは重く閉ざされていた。  まさか告白されてからこうも立て続けに会えない日が続くとは、真央は思ってもみなかった。      
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