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「さてと、役者も揃ったことだし、
そろそろ行きましょうか~。」
どうしよう。
目がきらきらである。
…まあ、自分で言い出したことだからしょうがないとも言える。
諦めて、無言で立ち上がる僕なのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
会議室。
辺りは暗く、スポットライトを当てたように一点だけ明るくなっており、
そこに二人の影があった。
「タラントル…だと?」
顔は、フード付きのマントで隠されていて見えない。
が、声からして30代ほどだろう。
驚くというより、ただ興味が湧いただけのような質素な言い方だった。
「ええ。
タラントルが、神の王国付近、
″カレラ洞窟″に出現したと報告が上がっております。」
相対していた若そうな声が答えた。
こちらもフードを被っていて顔はわからない。
「そうか…例の手筈は整っているのか?」
「はい。
神の国としては、
こちらの交渉に応じるしかありませんでしょう。
今すぐ洞窟の方に、捨て駒を派遣いたしましょうか?」
「いや、あの王のことだ。
既に洞窟に向かっているだろう。」
「それでは…」
「神の国とて、タラントルに敵うはずはない。
交渉材料としてこれほどのものは無い。
伝えろ!
我らの最強部隊を招集させ、王を捕らえるのだ!」
…明らかに顔がにやけていた。
卑しい笑い顔で彼は命令を下した。
「はっ…全ては閣下の仰せのままに…」
若い男はそう答えると、闇へと消えていった。
「くくくく…ついに……
ついに…神の国が我らの手に…
くふふふふ……ふははははははは…」
彼の笑い声は遠くまで響いていた。
そしてそれは闇に溶け込むように、
閑散とした室内に良く響いていた。
戦いの火種は、もうすぐそばにまで
近づいているのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
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