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本は人の心に翼を授け、人を自由にする――
木漏れ日の下、静まり返った無人駅。
駅のベンチで読み耽るのが私の密かな楽しみ―
でもここ一週間ほど落ち着かない。
また来た……黒スーツの金髪男。
「隣座っていい?」
「…どうぞ」
彼は座り、真横で私をガン見する。
「あの……何か?」
「学生って良いね」
「……え?」
「俺、東京の店でホストやってんだ。
親いないから大学行くための資金稼ぎ。
今は束の間の里帰り。
そしたらいつも楽しげに参考書読む君を見つけて……
勉強頑張って、行きたい大学行けよ」
電車が停車し、扉が開くと、彼は立ち上がる。
私は慌てて彼の背に触れる。
彼が振り返る時、私は一冊の赤い本を渡す。
「…これ、あげます。
私、同じのあるから。一緒に頑張りましょ」
「ありがとう。約束な」
その1年後、私達は正門の下で再会。
私と彼は思わず微笑んだ。
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