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花音がペンダントを見付けたのは、元の世界の両親の部屋だ。
だが、元の世界にそんな一族はない。
それにペンダントの力でこの世界に来たことを考えると、両親は、そして自分はこの世界の人間ということになる。
そうなると、何故この世界ではない世界で自分達は暮らしているのか、自分にこの世界の記憶が全くないのか、両親が全く話をしなかったのか。
わからないことだらけで、正直混乱しそうだった。
それがわかったのか、横にいた風夜が口を開いた。
「父上」
「何だ?」
「花音はまだこの世界に来たばかりで、混乱しているようです。彼女が光の一族かどうか、結論を急ぐことはないかと」
「ふむ」
「だが、風夜。奴等は段々と勢力を増してきている。そいつが光の一族なら、早めに力を取り戻してもらわなければ」
思案するように黙った王の横にいた青年がそう口を開いた。
「ですが、無理に力を目覚めさせることもないでしょう、兄上。彼女はまだこの世界に来たばかりで、何も知らない。まずはこの世界を知り、慣れるところからです。それにまだ、奴等は俺達で抑えられる」
「確かにまだどうにか出来ているようだが、これからも勢力が増す可能性もあるんだぞ」
「その時はその時ですよ」
「あ、あの」
風夜と青年の間だけで交わされる会話に花音は思わず口を挟んだ。
「その奴等というのは、何なんですか?」
「それは」
「花音、今日はもういい。その話は、また今度だ」
青年が言おうとしたのを遮り、風夜が言う。
その瞬間、青年が風夜を鋭く睨んだが、王が立ち上がったことで何も言わなかった。
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