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「いいだろう。花音、城の中に部屋を用意するから、今日は休みなさい」
「は、はい」
「風夜、案内しなさい。空夜、お前は他国に連絡するように」
王はそう言って、謁見の間を出ていく。それを見て、花音は息をはいた。
緊張が解けて、疲れが押し寄せてくる。その時、前に誰かが立った。
「おい」
「は、はい」
不機嫌そうな声音に、花音は思わず背筋を伸ばす。
声を掛けてきたのは、先程まで王の隣にいた空夜と呼ばれた青年だった。
「お前が光の一族でないなら、邪魔なだけだ。さっさと元の世界へ帰れ」
「兄上!」
空夜の言葉に風夜が声を上げる。花音は風夜が何かを続けようとするのを止めるように首を振ってから、空夜に頭を下げた。
それを見た風夜は溜め息をつき、空夜は花音を冷たく一瞥して立ち去っていく。
(私だって、来たくて来たわけじゃないのに……)
顔を俯かせていると、今度は誰かに服の袖を引っ張られる。
視線を動かすとニコニコと笑みを浮かべている幼い少女の姿があった。
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