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「ただいまー」
陽が落ち、薄暗くなりつつある中、制服姿の少女が家へと帰ってくる。
家の中は、人気はなく、明かりもない。
「お父さんもお母さんも仕事だったっけ」
呟いて少女、桐生花音は溜息をついた。
幼い頃から一人で留守番することはあり、帰ってきた時に誰も居ないのに慣れてはいたが、寂しいという気持ちもある。
溜め息をついて、廊下の電気を付け、階段を上がって自分の部屋へ向かう。
その途中で両親の部屋のドアが開いていて、中で何かが光っているのが見えた。
「何だろ?」
光っているものが気になって、両親の部屋へ入る。
光を放っていたのは、シンプルなペンダントだった。
「こんなの、お母さん持ってたっけ?」
どうにも気になってしまい、ペンダントを手に取ってよく見てみたが、やはり母親が付けているのをみたことはない。
「まぁ、何処にも付けていってないし、家に保管してあるってことは、それだけ大切なものなんだよね」
そう呟き、納得したように頷くと、ペンダントを戻そうとする。
しかし、その前にペンダントの光が強まり、花音を包み込む。
「えっ?きゃあああ!」
その直後、花音の足場がなくなり、何かの空間に投げ出されたように感じた。
一瞬後、光がおさまった時には花音の姿は消え、鞄だけが残されていた。
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